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【Talk to me ネタバレ感想】憑依チャレンジ! 心の整理をするために話す重要性

気になっていたA24最新のホラー映画「トーク・トゥ・ミー」を鑑賞しましたので、

感想をべらべらと書いていこうと思います。

 

あらすじ

2年前の母の死と向き合えずにいる高校生ミアは、SNSで話題の「90秒憑依チャレンジ」に気晴らしに参加してみることに。それは呪われているという手のかたちをした置物を握って「トーク・トゥ・ミー」と唱えると霊が憑依するというもの。ルールは、簡単

①手を握り、「Talk to me.」と唱える

②そのまま「I let you in.」と唱える

③手は必ず90秒以内にはなすこと

強烈なスリルと快感にのめり込みチャレンジを繰り返すミアたちだったが、メンバーの1人にミアの亡き母が憑依することから事態が大きく動き出す…

 

90秒憑依チャレンジ

90秒憑依チャレンジ、と言われているだけあってどうやらこの降霊術、かなり「ハイ」になれる…ようですね。

「ドラッグ」のメタファーとのことで

たしかにこのチャレンジをやっている若者たちは所謂「ドラッグパーティ」を開催して、痛い目を見るような若者の集まりに見えました。

主人公たちの話が始まる手前の長回し部分「コール」という男性が弟「タゲット」を探し回っているシーンなどは特に。

彼らは「90秒憑依チャレンジ」のために集まったのでしょう、けれど肝心の「手」の持ち主タゲットが一向に部屋から出てこない。だがそれを気にしている人物はパーティ会場の家の男のみ。

コールがタゲットを連れ出し、家に連れて帰ろうとするとタゲットは支離滅裂なことを言い始め、コールを刺し、自分の頭も刺し貫く…

会場は一気にパニック。

ドラッグを回してやってたら一人が中毒を起こして倒れて痙攣し始めた、といったような状態に似ていますね。

どちらにせよ、ドラッグのメタファーであるということはなるほどわかりやすいな、と思いました。

幽霊を憑依させるのが気持ちがいいという発想は新しくて面白いですね。

 

主人公ミアへの思い

主人公ミアですが、残念ながら私は始終イライラしながら見てしまいました…。

歩み寄ろうとしている父親との会話を避けているのにもかかわらず、友人に依存する、その友人に依存できなくなったら友人の恋人である元カレに依存する。

依存先をころころと変えているにも関わらず、依存先である人々と「心の底から」つながった会話をしていない、うわべだけの関係性(壊したくないからという恐れもあるのかもしれないが…)

ミッド・サマーの主人公にも感じた完全依存型主人公。

しかも何故か友人の言葉や歩み寄ってくれた父親の言葉には耳を貸さず、幽霊のいうことは聞くという……

もちろん幽霊が母親を装っているというのはあるが…それに関しても友人たちがもしかしたら化けているかもしれないと忠告しているシーンもあったので、もう少し疑ってもいいんじゃないのか?と思ってしまったのが事実です。

ただ、ミッド・サマーの時も思ったがイライラする、というのもそれだけ俳優さんや脚本家がうまいのだと思うのですが…

とはいえ、私は本作の主人公への感情移入は全くできなかった。というのが率直な感想です。

 

ホラー作品として

ホラー作品としてはなかなか好きな部類です。

幽霊の造形はおぞましく、不気味…(日本とは違いグロ多めなのは国民性の違いだと思っているけれど)

そして多くもなく少なくもない、ちょうど良いタイミングでジャンプスケアを入れてくれる。程よく怖がれたので、個人的には結構楽しかったです。

印象的なのは最終局面のシーン

「彼は救いを求めているわ」なんて幽霊にそそのかされ、友人ジェイドを嘘の電話で病院の外へ連れ出し、弟「ライリー」を手にかけようとするミア。

そんな彼女のもとへそうとは知らず、ライリーの母親が来る。

彼女はミアに対し、ライリーが運ばれた日に怒鳴ってしまったことを詫び、彼女を「家族」として認め抱きしめる。ちゃんとした大人だぁ…と思いました。なんて素敵な母親なんだろう、最初は厳しいなぁなんて思っていましたが、子供たちを守るのに親も必死なんですよね。

しかし、ここで改心しないミア。ライリーと二人きりにしてくれ、と母親に頼み、ライリーを手にかけようとします。

しかし自分では手にかける勇気がなかったのだと思います。そのままライリーを連れ出し、車いすに乗せ近くの道路へ。

結果友人ジェイドが何とか駆け付け、ライリーは無事・ミアだけが車に跳ね飛ばされる……という状況となります。

そして部隊は急に病院へ。

目を覚ましたらしいライリーとジェイドその母親がにこやかに話しているシーン。

ミアが声をかけても反応すらしない。

途中友人たちに話しかけるもそちらも反応なし。

そこでミアは何かに気が付き自分の手を見る。バキバキに折れている状態。おそらく、何の痛みも感じていなかったんでしょうね。自分が幽霊だということにここで初めて気が付きます。

病院を去っていく父親の背中を発見し、一人にしないで!と叫びながら父親を追いかけるも幽霊となったミアの姿は父親にも見えず……真っ暗闇。

そんな中…

シュッ

マッチを擦る音

ぼうっと浮かび上がるろうそくの光…

そちらへ向かうと、手が差し伸べられている。

ミアがその手を握る…異国の若者たちのようだ。

その若者たちが何かわからない言語で話した後次の言葉を告げる

Talk to me」

 

個人的にはかなり好きな落ちでした。だからこそ、ミアに感情移入できなかったのがかなり残念な印象です。

 

幽霊は孤独

個人的に心霊やオカルトは好きなのでYoutubeでもかなり見ているのですが、

トクモリザウルスチャンネルの「ヤースー」さんの話を思い出しました。

幽霊は孤独だということ。

どういうことかというと、

私たちは生きている間に「幽霊」を見たことがある人の方が少ないと思います。私も見たことはありません。

そして幽霊を見たことがある人の中でも常時見えている人は本当に少ないと思います。

さて、では自分が「幽霊」になったときに…幽霊は見えるでしょうか?

幽霊=化け物というわけではなく、幽霊はもともと人間です。人間にできないようなことはできないらしくつまり…幽霊になっても幽霊は見えない。生きている人間は見えるけれど自分と同じ死んだ人間は見ることはできない。

つまり、ずっと孤独なのだそうです。

なんとなく説得力のある話だなと思いました。

たしかに、幽霊になったからといって急に幽霊が見えるようになる!っておかしな話ですよね。

勿論証明のしようもないのですが、面白い話だと思っています。

そしてそんな孤独な状態で数年、数十年過ごしていた時、

自分を見て「はっ」という顔をする人間を見つける。

気づいてくれた!と幽霊は寄ってくるそうです。

やっと私に気が付いてくれた、私の話を聞いてほしい、私を見てほしい…

数十年の孤独に比べれば一週間その人のもとで何かを言い続けるなんて平気…という理論で人にとりつく幽霊が一定数いるともいっていました。

今回の作品はまさしくそうなんじゃないでしょうか?

幽霊同士でちゃんとした会話が成り立っていない、もしくはミアが体験したような真っ暗闇に一人ぼっちの世界。

そしてそんな中自分と「Talk to me」と言ってくれる人物が現れたら……

 

Talk to me.

主人公ミアは一貫してストレスに対して「逃避」を選んでいるように見えました。

母親が自殺であるという事実を父親から告げられても受け入れていないこともそうですが、

依存先である友人宅を失いたくないが故、家のルール、降霊術のルールを破り、友人の「弟」を危険にさらす

友人の母親から激怒された際も許しを請い続けるのではなく、その場から立ち去り駆け付けた優しい元カレへ依存など…(まぁその元カレも幽霊が憑依してしまったミアから逃げていくのだけれど)

ミアは本当に心の底から誰かと「話す」ということから逃げ続け、母親の死を受け入れることができないまま、2年…悲しみを乗り越えず逃げ続けてきたように感じました。

そして死んでしまった後に見たこともない異国の若者に「Talk to me」と初めていわれる。

何とも皮肉の聞いた終わり方ですね。

人はだれしも悲しい体験、つらい体験をする瞬間があると思います。

ただ、それを誰にも話さず抱え続けていたらこうなっちゃうよ、っていう話なのかなぁと思いました。(にしてもミアの行動心理にはなかなか納得がいきませんでしたが……)

何かストレスフルなことが起きた時、

誰でもいい、身近な人に話せないならセラピストでも、医者でも、その辺にいる犬や猫でも、「話す」ということは大事なんだと思います。

吐き出すことで自分の状況は整理できる。

なんならブログに「書く」ってのもいいかもしれません。

悲しみから逃げず、自分の中で乗り越えるための行動を起こしていこう、と…まぁそんなところで今回の感想はおしまいです。

 

同日に「ウィッシュ」も見てきたのですがそちらの感想はまた今度。